私は、子どもに本を読ませることで将来頭がよくなってほしいとか、本の内容を覚えて学ばせたいと考えている訳ではありません。ただ、幼少期にたくさんの言語に触れて、言葉の描写が巧みになってほしいとは思います。そうすれば、大人になったときに心の表現力も上がり、意思疎通もしやすくなることで、人生の幸福度が上がるのではないでしょうか。

 最後に、「今でも読み返したい思い出の本」3冊を紹介します。

■『おおきなきがほしい』
さとうさとる/文 むらかみつとむ/絵(偕成社)

「おおきな おおきな 木があるといいな。ねえ おかあさん」。ページをめくると、木の幹の上に素敵な台所があったり、かわいいリスの親子のおうちがあったり……。子どもの「こんなことあったらいいな」がたっぷり詰まっています。色とりどりの絵も、印象に残っています。

■『トム・ソーヤーの冒険』
マーク・トウェイン/作 大塚勇三/訳 八島太郎/画(福音館書店)
アメリカ・ミシシッピ川沿いの村が舞台の、トムと仲間たちの冒険を描いた物語。因習に縛られて生きる大人たちとは対照的に、親元を逃れ、放浪しながら自由に生きる少年ハックルベリー・フィンが大好きで、彼の生き方に憧れていましたね。

■『シャーロック=ホームズ全集シリーズ』
コナン=ドイル/著 各務三郎ほか/訳(偕成社)
依頼人の服装や癖を見ただけで職業を当ててしまうなど、ホームズの類まれなる洞察力がすごく格好よく感じられました。将来はホームズのように、自分の持っている特殊な技能で世界を渡り歩くような仕事がしたいと考えるきっかけにもなりました。

「AERA with Kids春号」では、為末さんをはじめ、16人の識者に「小学生のうちに読みたい本」を聞き、紹介しています。

(取材・文/阿部桃子)

AERA with Kids (アエラ ウィズ キッズ) 2020年 春号 [雑誌]

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阿部桃子
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