しばらくの間、赤ちゃんのこの行動は続きますがいつの間にか立たなくなります。同じように、机に足を上げることも、赤ちゃんにとっては「ただ上げているだけ」なので、「足おろすよ」と言って手を足に添えておろすだけでOKです。「足を上げちゃダメ!」「お行儀の悪い足ね!」と親が反応すると赤ちゃんは面白がって再度します。ポイントは淡々と言うことです。

(4)スプーンでガンガン机をたたくとき

 スプーン等の細長い道具をつかむと、たたいてみたくなるのは人間の心理かもしれません。先日うちの保育所でもおままごとセットのフライパンとスプーンを持って楽器のようにたたいて上手にリズムをとっている子がいました。「おお、工夫したなあ」と思いつつもこれは楽器ではないので「料理を作ろう!」と誘っておままごとを開始しました。

 そう、食事の時も同じです。スプーンで机をたたくと楽しい音が鳴って赤ちゃんにとっては新発見で嬉しいのですが、スプーンと机は楽器ではないので「ご飯すくおう!」と言ってたたくのをやめさせ、食べる方向に意識を向ける対応をします。何度も何度も机をたたくでしょうが、繰り返しスプーンは食べ物を食べる道具ということを伝えていきます。たたくことが好きならば、遊びの時間に木琴や太鼓などのたたく楽器を用意して、たたく遊びを十分にさせてあげることも一つの方法です。

 離乳食時に食事のマナーをしつけようと思わなくて大丈夫です、と最初に話しましたが、例に挙げた4つの話は、結果的に食事のマナーのしつけです。「しちゃダメ!」と注意すると、できなかった時にしんどくなりますが、してほしい行動を言ったり、「こうしてみよう!」と提案したりすると、結果的にゴールは同じなのに、言う側の親も、言われる側の赤ちゃんもしんどくなりにくいものです。行儀よく食べることももちろん大切ですが、離乳食期は「食べるって楽しいな!」の心を育てることも意識してみましょう。(文・中田馨)

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中田馨

中田馨

なかた・かおり/1978年生まれ。兵庫県の認可保育園、中田家庭保育所施設長。一般社団法人離乳食インストラクター協会代表理事。保育士目線の離乳食講座受講生は4年で2000人。自身も中3男子、小5女子の子育て中。

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