入学試験自体の難易度こそ「それほど高くなかった」が、授業での予習復習は欠かせず、1日のほとんどを勉強にあてている。将来は「臨床を行い、研究も進め、論文を発信していきたい」という。

 進みたい進路によって、進むべき医学部も変わる。研究医を目指すのなら旧帝大や旧制医科大、伝統のある私立御三家(慶應義塾大、東京慈恵会医科大、日本医科大)などが研究に強い。論文数が多ければ、研究に長けた指導教官を期待できる。09年から12年までの間に、全国の大学病院を対象に所属医師100人あたりが発表した主要な臨床論文数を調査した。首都圏や関西圏在住で開業医を目指すなら、私立大にネットワークがある。地域医療に貢献したいなら、地方の国立大医学部に蓄積がある。

 今後の新しい流れとして、駿台教育研究所の石原賢一進学情報事業部長は、ITによる医療の変革を指摘する。

「あと20年も経てば、脈拍や血圧などの一般的な検査はスマホで行い、そのまま医療機関に送る時代になるのではないか。ただ医学部に入ることだけを優先するのではなく、自分のやりたいことを見定めたほうがいい」

 石原部長によると、将来有望な分野は工学とのコラボレーションだという。

「パラリンピック選手が使用する義手や義足などは、医療人と技術者が協力することによって進化しています。人工臓器や、たとえば自宅でも透析ができるコンパクトな透析器など、医療と工学の融合分野は今後大きな市場が期待できます」

 選択肢が多いぶん可能性も広がる、医学部生にとって刺激的な時代が始まった。(ライター・柿崎明子)

AERA 2020年3月2日号より抜粋