AERA 2020年3月2日号より(撮影/岸本絢)
AERA 2020年3月2日号より(撮影/岸本絢)

 今年の保活も「不承諾」の嵐が吹き荒れた。いくら保育園の数が増えても、入りたい園に入れないミスマッチの問題が背景にある。保活の実態は──。AERA 2020年3月2日号では、保活に悩む親たちを取材した。

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 2020年度4月入園に向けた保活の結果が各地で出た。

「新設園も増えてるし、待機児童が多いとはあまり聞かないので、今回は大丈夫だろうと思っていたけどダメでした」

 東京都武蔵野市在住で高校教師の前山麻奈美さん(35)は声を落としてそう話す。4月入園に向けて次男(1)の保活をしたが不承諾となった。

 長男(4)を出産して育児休業から復帰する際は川崎市に住んでいた。保活に苦労し、市内の認可外園に預けた。その後、職場近くの武蔵野市に転居し、なんとか2歳児の途中で認可園にありつけたという苦い経験があった。

「川崎は激戦区で有名でしたが、武蔵野市でダメだとは……。うちは頼れる親が近くにはいないので困っています」

 職場からは、2歳になるまで育休を延長し、その後は休職扱いにして来年の春まで休むよう言われた。だが、そこで保育園に入れる保証もない。

 タワーマンションが立ち並ぶ東京都江東区。駅近の保育施設に人気が偏り、1歳児の申し込み倍率が50倍を超える園も。激戦園を希望していた、同区に住む女性は1歳児枠で申し込み不承諾通知を受け取った。

「全体では待機が減っているって情報もあったので、どこかには通るだろうって思っていたのですが……」

 厚生労働省は昨年4月1日時点の待機児童数について、1万6772人で過去最少だったと発表した。保育園の増設が各地で相次ぎ、受け皿の数自体は確かに増えている。だが、今年も「不承諾」を嘆く親たちは多数いた。背景には希望の“ミスマッチ”がある。それは、たとえ保育園に入れたとしても、通えないという悲劇を招く。

 横浜市に住む女性(37)は、以前、待機児童ゼロを達成した同市に転居し、保活に臨んだ。「承諾」は得られた。だが、仕事を辞めざるを得なくなったのだ。

「3歳の上の子は第1希望の園だったんですけど、2歳の下の子は第3希望のこども園。2人バラバラだったんです」

 女性は雨の日の送迎を想定して試しに2園間を歩いてみた。かかった時間は徒歩40分。

「現実的じゃないです。通園は無理だと判断しました」

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