※写真はイメージ(gettyimages)
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 医師といえば、学びも職場も大学、世間からは「先生」と呼ばれる超エリートとされてきた。現役医師573人へのアンケートからは、激務に疲弊する医師の姿が浮き彫りになった。AERA2020年3月2日号から。

【図を見る】医師573人にアンケート!年収は?労働時間は?医療現場の課題とは…

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 アンケートでは7割以上の医師が年収1千万円以上だった。だが、この年収額を「適正」とするか、「少ない、やや少ない」とするかで評価は二分された。メドピア社長で医師の石見陽さんは「年収の受け止め方が二極化している。ただ、医師はお金だけで動く人たちではない。やりがいが左右しているのではないか」と指摘する。

 適正な額だと感じられるのは、仕事にやりがいをもてることが前提のようだ。

 やりがいを求め、敢えて大学病院に戻ることを選んだケースもある。40代男性は昨年、勤めていた病院を辞めて、都内の大学病院に飛び込んだ。妻と子どもが2人いるが、「給与が低くても、研究に専念したい」と思ったからだ。だが、実際は入院患者の診察に追われた。複数の病棟を担当しているため、それぞれの病棟で、たくさんの棚の中から処置をする道具一つ探すのにも、慣れた看護師に気を使って尋ねなければならない。上司との方針の違いもあり、希望する研究はできず消耗した。

「給与は元いた病院の3分の1に減りました。だめだこりゃ」。結局、男性は春から別の病院で働くことを決めた。

 世の中では、医師は成功者、つまりエリートだというイメージが強い。だが、「成功していると思うか」の問いに、半数近くが「そうは思わない」と答え、「そう思う」は3割弱にとどまった。その理由として、正面から「やりがい」を質問したときとは正反対の声が多くみられた。

「重労働。救命や治療として患者を診るためには犠牲が必要」(50代男性、一般内科)「休みも少なく、呼び出しも多く、危険や訴訟のリスクもある」(30代男性、放射線科)

 昨今の働き方改革推進の波に乗り、医師の働き方改革も国を挙げて進められようとしている。時間外労働時間を減らすよう取り決めた。勤務医の負担軽減や待遇改善のための計画を作るなどの病院への診療報酬が一部手厚くなるよう、改定することになっている。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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