栗原心愛さんが亡くなる前、自分に宛てて書いていた手紙。「未来のあなたを見たいです。あきらめないで下さい」と綴られていた(写真/朝日新聞社)
栗原心愛さんが亡くなる前、自分に宛てて書いていた手紙。「未来のあなたを見たいです。あきらめないで下さい」と綴られていた(写真/朝日新聞社)

 彼は、心から反省したのか――。

 千葉県野田市の栗原心愛(みあ)さん(当時10歳、小学4年生)が昨年1月、虐待を受けて死亡した事件で、傷害致死などの罪に問われた父の勇一郎被告(42)の初公判が21日、千葉地裁で開かれた。

 午前11時、同地裁でもっとも大きい法廷201号室。勇一郎被告は、短髪に黒いスーツ、青いネクタイをつけ、5秒ほど深くお辞儀してから入廷した。

 冒頭陳述で検察側は、「勇一郎被告は、継続的日常的な虐待の末に死亡させた」と指摘。

 証言台の前に立った勇一郎被告は、まっすぐ視線を前に向け、小声で涙ながらに謝罪した。

「してしまったことはしつけの範囲を超えたもので、深く後悔しています」「みーちゃん、本当にごめんなさい」

 だが、起訴内容は「事実と異なる」と一部否定。中でも、傷害致死罪に問われた、飢餓状態にしたり顔面に冷たいシャワーを浴びせたりして死に至らせたという部分については、

「冷水を浴びさせたことはありません」

 と否定した。

 勇一郎被告の暴行を制止しなかったとして、傷害ほう助の罪に問われた心愛さんの母親・なぎさ被告(33)には、すでに懲役2年6カ月、保護観察付き執行猶予5年の一審判決が出ている。今回の裁判では、勇一郎被告のなぎさ被告に対する暴行罪も併せて審理されるが、勇一郎被告はその暴行も否定した。

 一方、弁護側は、勇一郎被被告は「長女(心愛)の教育と考え、結果として虐待になった」と主張した。

 裁判を傍聴した人たちの感想はさまざまだ。女性(42)は、

「(勇一郎被告は)几帳面で神経質だと聞いていたが、イメージ通り。泣いていたので、後悔はしていると思う。だけど、反省しているかはよくわからない。もう少し見ていきたい」

 と話した。同じく傍聴した50代の男性はこう言った。

「髪も短くして深くお辞儀をしたりして、反省していると思わせようとする意図が見える。全然反省していないと思う」

 心愛さんは亡くなる3カ月前に、学校で自分に宛てた手紙を書いていた。手紙の最後に、こう書いた。

「未来のあなたを見たいです」

 しかし、わずか10歳で心愛さんの小さな命と未来は奪われた。

 勇一郎被告は、この罪の重さを認識する必要がある。第2回公判以降は証人尋問や被告人質問があり、判決は3月19日に言い渡される見通しだ。

(編集部・野村昌二)

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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