「今後の新築マンション価格を予測する上で重要なのは、地価と建築費の動向、そして住宅ローン金利の動きです。先行的な地価指標となる地価ルックレポートによれば、都市部の地価上昇が続いており建築費も高止まり傾向にあります。原価ベースで考えると数年先まで新築マンションの上昇傾向は続くと予想されます」
日本不動産研究所の予測でも、東京23区の1平方メートル当たりのマンション価格は20年には前年比0.8%の上昇となる見通し。21年はマイナス0.2%など下落に転じるものの、その下落幅は小さく、大きな値下がりは期待できないだろうとしている。
新築が高くなり過ぎたなら、中古はどうかという選択も出てくるが、こちらも新築を追うように上がり続けている。
東日本不動産流通機構によると、19年の首都圏の中古マンションの平均成約価格は3442万円。これは新築マンションの57.5%にあたる。10年前の09年は中古は新築の54.9%で、両者の「差」はほぼ一定。中古の価格は7年連続で上昇しており、新築価格の上昇に歩調を合わせるように中古も上がっていることがわかる。
これだけ長く上がり続けていることもあって、新築、中古ともそろそろ頭打ちになるのではないかという見方はある。販売日数の長期化は専門家の間でも話題になっており、値上がりのペースはそろそろ落ち着くとの見方が一般的だが、下落するとの予想はほとんど聞かれない。
待っても下がらないなら、年収や自己資金などの条件が許し、魅力的と感じる物件に出合ったら「買い」と言えるかもしれない。いたずらな待ちの姿勢は、せっかくの購入機会を失うことにもつながる。
一方で、資金面で背伸びが必要な状況なら、本当に購入するべきかを冷静に考えることも必要だ。実は、全国的に見れば家は余りに余っている。「老後に備えて持ち家を手に入れておく必要がある」という考えが時代遅れになりつつある。(住宅ジャーナリスト・山下和之、編集部・川口穣、上栗崇)
※AERA 2020年2月24日号より抜粋