すぐには買い手が付かない高値を付け、じっくりと売る。そんな大手の戦術が成立するのは、多くの物件で最終的には買い手が現れているからだ。

 まず、最近は減少気味とはいえ、海外からの資金による購入が一定数ある。国内の富裕層も、高値になったマンションを資産形成の目的で購入しているとみられる。都心部などの高額物件でその傾向が強い。

 さらに、共働きの増加で、一般的な会社員でも高くなったマンションにも手が届くようになっている。リクルート住まいカンパニーの調査では、首都圏で新築マンションを買った人の世帯年収は、08年の737万円から、18年には960万円に上がっている。

 超低金利も追い風だ。20年2月現在、変動金利型住宅ローンの金利は0.3%台まで下がっている。たとえば、年収800万円で、返済負担率(年収に占めるローン返済額の割合)を、比較的安全なレベルといわれる25%に収めたい場合、金利2%なら借り入れ可能額は5010万円だが、金利0.5%だと6420万円まで増える。不動産経済研究所によると首都圏の19年の新築マンションの平均価格は5980万円だから、計算上は手が届く。

 ただ、全ての物件で大手各社の思い通りにことが運ぶとは限らない。

 売れていない部屋は、いわば「在庫」だ。過剰な在庫、売れない在庫は経営にとって大きな重荷になる。それは在庫に高い価値があるように見せかけることで経営状態を取り繕おうとした三洋電機や東芝が、その後たどった道を見れば明らかだろう。

 高値が付いていても、実はなかなか売れない物件がある。初月契約率は一時的とはいえ50%を割った。オリンピック後には景気が後退するかもしれない。これだけそろえば、やがて価格が下がるのでは──と期待するのが人情だ。だが専門家は、当面はマンション価格が下がらないと予想する。

 分譲マンション動向分析に定評のある、不動産コンサルタントの岡本郁雄氏は言う。

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