この映画にはカムイサウルスのほかに、小林教授が発掘・研究を行ってきたモンゴルやアラスカなどの恐竜や、海にすむ爬虫類モササウルス、空を飛ぶ翼竜なども登場する。

 恐竜映画というと、おもしろさやスリル、サスペンスを優先させて、科学的な裏付けが乏しいものも多い。それに対して「超恐竜伝説」はあくまで科学研究に基づいている。制作スタッフは世界各国の研究者に取材して、未発表の、研究者の頭の中だけにある新しいアイデアを随所に取り入れた。だから、これまで知られていなかった恐竜の意外な姿も生きいきと描き出されている。そのいくつかを挙げてみると……。

 約7千万年前のモンゴルに生息していたデイノケイルスは、1965年に長さが2・4mもある腕の化石だけが見つかっていた「謎の恐竜」だったが、小林教授たちにより全身の骨格が段階的に発掘・発見され、その生態の研究も進んだ。その結果、デイノケイルスは全長が11mもある巨大な恐竜で、雑食性であることが明らかになった。

「なぜ雑食性といえるかというと、骨の化石といっしょに胃石(食物をすりつぶして消化の助けにする石)がたくさん出てきたのです。その石の特徴から、植物を食べる動物のものとわかりました。また、胃石と一緒に魚の骨も見つかったのです」(小林教授)

 また、デイノケイルスの大きな腕には小さな翼があったと考えられる。映画では、デイノケイルスのオスとメスが頭や腕の鮮やかな羽毛を使って求愛のダンスをするシーンも出てくる。これは恐竜の仲間であることがわかっている鳥類の研究者の考えを参考につくられた。

 北アメリカを舞台にティラノサウルスが夜の森に入って狩りをし、トリケラトプスを襲う場面も出てくる。脳の形から、ティラノサウルスは嗅覚が発達していたことがわかってきたので、おそらく光のない夜でも狩りができたのだろうという推測からこのシーンがつくられた。

 このように興味深いシーンが次々に出てくる。残りは劇場に足を運んで、ぜひ大スクリーンで確認してほしい。

(サイエンスライター・上浪春海)

※月刊ジュニアエラ 2020年3月号より

ジュニアエラ 2020年 03 月号 [雑誌]

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上浪春海
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