後輩たちとの絆も垣間見えた。スタッフに扮してタブレットを持ち登場したKis-My-Ft2の玉森裕太と和気あいあいのやり取りを見せ、気になる後輩を問われて「今年、嵐が今後の時間をどうやって過ごしていくのかすごく気になる」と答えた。出演前の楽屋に堂本剛から電話があったことも明かした。

 また、“いまの木村拓哉”だけではなく、誰もが知る“キムタク”のイメージにもストレートに応え、観客の大きな興奮を呼んだ。正月特番「さんタク」のロケで奄美大島に行った帰り、明石家さんまから「曲はアーティストだけのものじゃない。聴いている人との共有物や」と説かれたことを明かすと、バンドメンバーが突然、SMAPの「SHAKE」のイントロを演奏し始めた。木村は「わかったよ。いってやろうか!」と告げ、ダンサーを従えて歌い出しの「プルーハー!」というフレーズから全力でパフォーマンス。喜ぶ観客の顔を前に、「これからもみんなと自分の共有物を大切にしていきたいと思います」と、感慨深げに語っていた。

「あすなろ白書」(93年)主題歌の藤井フミヤ「TRUE LOVE」や、「ロングバケーション」(96年)主題歌の久保田利伸「LA・LA・LA LOVE SONG」など、かつて主演したドラマの主題歌を、当時の映像をバックに歌う場面もあった。アカペラで歌い始めたアンコール「夜空ノムコウ」では、観客が息をのむ様子が生々しく伝わってきた。

 彼にとっては今回のライブがミュージシャンとしての「新たな出発」となる。

 明石家さんまには「オールドルーキーやんけ、格好いいやんか」と言われたという。1月にCDデビューしたジャニーズ事務所の後輩、SixTONES(ストーンズ)とSnow Manに触れ、「彼らと同期。あいつらもよろしくお願いします」と語った。

 ソロミュージシャンとしてスタートする。そんな意気込みがありありと伝わってくる、「スペシャル」な一夜だった。(文中敬称略)(音楽ジャーナリスト・柴那典)

AERA 2020年2月24日号