木津さんは、岩手県遠野市、和歌山県海南市、兵庫県香美町、青森県十和田市など地方を歩く中で家余りの現状を目の当たりにしてきた。

「地方に行くと、まるで落とし物みたいに土地付きの家が数十万円で売られているんです。石川県穴水町では6LDKの空き家が月5千円で貸し出され、福井県鯖江市では、人口を増やしたい行政が、“半年間はどこに住んでも無料”というキャンペーンをやっていました」

 東京理科大建築学科で学び、1級建築士として大手ハウスメーカーで勤務した経験もある木津さんにとって「家」とはどんな存在なのだろうか。

「家を買ったから安心でもないし、家がないから不安でもない。身の丈を超える借金をしてまで新築を買うという価値観が転換する時期は近づいていると思います」

(ライター・吉松こころ)

AERA 2020年2月24日号より抜粋