宇宙ベンチャーへの転身で「未来に貢献する権利」を手に入れた (1/4) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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宇宙ベンチャーへの転身で「未来に貢献する権利」を手に入れた

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渡辺豪AERA
ドイツ航空宇宙センター(DLR)の長官(右から4人目)らがispaceを視察した際、月面探査車(ローバー)とともに撮影した一枚。左から2番目が佐藤将史さん/2019年10月、東京・芝公園で(写真提供/ispace)

ドイツ航空宇宙センター(DLR)の長官(右から4人目)らがispaceを視察した際、月面探査車(ローバー)とともに撮影した一枚。左から2番目が佐藤将史さん/2019年10月、東京・芝公園で(写真提供/ispace)

米国で毎年開催される世界最大規模の宇宙カンファレンスIACに参加。1週間にわたるブース展示の解体作業を終えてくつろぐispaceのメンバーたち。左端が佐藤将史さん/2019年10月、ワシントンD.C.で(写真提供/ispace)

米国で毎年開催される世界最大規模の宇宙カンファレンスIACに参加。1週間にわたるブース展示の解体作業を終えてくつろぐispaceのメンバーたち。左端が佐藤将史さん/2019年10月、ワシントンD.C.で(写真提供/ispace)

 働き方の自由度が高まっている。人生100年時代を迎え、70歳まで働くために息切れしないよう、一度ペースを落とす人。逆にペースを上げる人。いずれの場合も、決めるのは個人だ。AERA2020年2月17日号では両方のケースをレポートしたが、40代で大手企業のコンサルタントから宇宙ベンチャーに転職した男性は、ある「大義」を掲げていた。安定を捨ててでも、手に入れたかったものがあるという。

【写真】世界最大規模の宇宙カンファレンスIACに参加したispaceのメンバーたち

*  *  *
 半期ごとの業務面談。個室で向かい合った上司から厳しい表情でこう言われた。

「最近、1人で仕事しているんじゃないか」

 そんなわけはなかった。掛け持ちで担当している複数の案件は、すべて3~4人のチームで取り組んでいる。上級コンサルタントとしてチーム内の若手を引っ張る立場でもあった。

 だが否定しかけて、言葉に詰まった。たしかに、このところ社外の営業に忙しく、社内にいないことが多い。同じチームの後輩から「ミーティングしたいのになかなか捕まらない」と苦言を呈されたこともあった。

 上司が諭すようにこう続けた。

「社外活動に熱心なのもいいが、会社に助けられて働いているんだから……」

 そう言われた瞬間、「視界がバアーって開けたように感じた」と佐藤将史さん(42)は2年前のことを振り返った。

「今の自分は本当に会社に助けられているか?と疑問を持つようになったんです」

 佐藤さんが16年間勤務した野村総合研究所(NRI)から宇宙ベンチャー「ispace」(本社・東京)に転職したのは昨年6月だ。月面探査事業を担う同社は、世界でしのぎを削る有望ベンチャーだ。とはいえ、グループ企業を含むと従業員1万数千人規模の東証1部上場企業から、約100人のベンチャーへの転身を決意するのには相当な葛藤があったという。

 東京大学、同大学院で地球惑星物理学を専攻した佐藤さんにとって、研究者として世界で活躍することは幼いころからの憧れだった。そんな佐藤さんが博士課程を断念したのは、優秀な研究人材が多いことを実感したからでもある。にもかかわらず、日本の企業社会は文系卒の経営者が牛耳り、理系の人たちは不遇をかこっている――。そう考える佐藤さんがNRIに入ったのは、理系人材をもり立てていきたいという使命感があったからだ。


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