ネタを切り出した端材を活用した「海鮮丼」
ネタを切り出した端材を活用した「海鮮丼」
人気のトロの端材が貯まったときだけ登場する「とろ鉄火」
人気のトロの端材が貯まったときだけ登場する「とろ鉄火」

 回転寿司の会社で仕事をしていてよく聞かれるのが「あの値段でお寿司を販売していてよく利益が出ますね。いったいどんなカラクリがあるんですか」ということです。

「赤字覚悟の大サービス」といったセールストークを時々耳にしますが、ビジネスでやっている以上、最初から赤字前提で販売することは、普通ではありません。

 ではいったい、どんなカラクリがあるんでしょうか? 今回は、こっそりとその秘密を公開します。もちろん言える範囲だけですが……。

 一般的に、当社をはじめとする大手回転寿司チェーンの原価率は50%程度と言われています。一般的な飲食店の原価率は30%以下と言われていますので、かなり高いですね。それだけいい材料を使っているということなので、お客様の立場でみるとお得と言えますね。

 ではどこでコストを削っているんでしょうか?

 まず回転寿司では、お客様がレーンから直接お寿司を取るか、タッチパネルで注文した料理は、専用レーン等で席に届きますよね。つまり、注文をとったり料理を届けたりする店員の手間が省けているんです。

 さらに厨房の中も、とても自動化、合理化が進んでいます。その結果、具体的な人数は言えませんが、普通の外食産業に比べて、お客様1人あたりの店員数は、かなり少なくなっています。

 主要な商品が、にぎり寿司と軍艦、巻き物と標準化が進んでいるのも、自動化やロボット化をしやすかった理由です。

 準備作業を除いた基本的な調理工程は、にぎり寿司の場合、(1)シャリを握る(2)ネタを乗せる、の2工程、一番手間のかかる巻き物でも、(1)海苔にシャリを乗せる(2)ネタを乗せる(3)巻く(4)切る、という4工程で済みます。他の料理に比べると、かなり手間がかからないのではないでしょうか。

 シンプルなだけに、他社と差別化できる魅力的な商品開発と、お米やネタなどの材料の厳選がカギを握るわけですが……。

 さらに最近では最新のICTやAIの活用も進んでいます。例えばくら寿司では、お客様がお店に着かれてから、席へのご案内、お食事を終えられた後の会計、精算まで一切店員と話すことなく完了する仕組みを、今年中に、半分以上のお店に導入する予定です。

 その一環として、画像認識とAIを使って、食べたお皿や丼の数を自動的に正確にカウントする仕組みの導入を、今月から開始しています。

 ほとんどの回転寿司店では、お食事を終えられた後に「会計」のボタンを押すと、しばらくして店員がやってきて「ありがとうございます。お会計は○○○○円になります。番号札をもってレジまでお願いします」というやりとりがありますよね。

著者プロフィールを見る
岡本浩之

岡本浩之

おかもと・ひろゆき/1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2021年1月から取締役 広報宣伝IR本部 本部長。

岡本浩之の記事一覧はこちら
次のページ
もう一つのポイントは…?