「岩手は第二の故郷だと思っています。地元の方に会うと本当に親戚のように、何の違和感もなくお話ししてくださるので、これは言っても大丈夫かなと思って、第二の故郷と言わせていただいています。とても人見知りなんですけど、こんなに人と緊張せずに話せるのは初めて。岩手だからだなって思ったりします」

 ベテラン俳優たちの円熟味あふれる芝居とのんさんのフレッシュな魅力で上質な喜劇映画に仕上がった。

「笑えるしグッとくるし、ドラマもしっかりある。家族で見に行ける喜劇だと思います」

◎「星屑の町」
戸田恵子、柄本明などベテラン俳優の演技も見もの。2月21日から東北4県先行上映、3月6日から全国公開

■もう1本おすすめDVD「この世界の片隅に」

 戦争をテーマにしたアニメーション映画として異例のロングランヒットを記録、現在「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」として、250カットを超えるエピソードを追加したバージョンが新作として劇場公開されている本作。のんさんは主人公・北條すずの声を演じている。

 1944年、軍港として栄えていた広島県呉市に嫁いできたすず。見知らぬ土地で、新たな家族との日々が始まる。配給物資が減っていく中でも工夫を凝らして食事を用意し、時には好きな絵を描きながら日常を送っている。しかし45年3月、呉は激しい空襲にさらされ大切なものが失われていく──。

 細部までに凝らされた歴史考証、丁寧な日常の描写から静かな反戦の意思が伝わってくる。原作はこうの史代さんの漫画で、監督は宮崎駿監督作品で脚本や演出補を務めた片渕須直さん。のんさんの起用は、監督が「ほかには考えられない」と絶賛してのオファーだったという。

「あまちゃん」や「星屑の町」では東北弁だったが、本作では広島弁。のんさんのゆったりとした声が浮遊したような不思議な時間感覚を作っている。

◎「この世界の片隅に」
発売・販売元:バンダイナムコアーツ
価格3800円+税/DVD発売中

(編集部・小柳暁子)

AERA 2020年2月24日号