災害に特化した不動産情報サービスもある。地盤の診断事業を手掛ける地盤ネットは、住所を入力すればその地点の地盤が100点満点で表示されるサービス「地盤カルテ」を開発した。自社で調査した地盤改良比率のほか、液状化、土砂災害、浸水、地震による揺れの各リスクをハザードマップを元に点数化。わかりにくい地盤情報を天気予報のように見える化・数値化したという。

 不動産取引の際、土砂災害警戒区域や津波災害警戒区域などに指定されている場所ならば不動産業者に告知義務があるが、そうでない場合、業者はリスクを説明しないケースが多い。だがリスクがあるとわかれば、保険でカバーしたり、早めに避難したりして回避もできる。

 地盤カルテの事業責任者で地盤ネット総合研究所所長の小林智浩さん(54)は言う。

「年々災害の規模が大きくなり、頻度も増えています。どんな災害リスクがあるのかは必ず把握するべきです」

 不動産業界のなかには、効率化や情報開示を恐れる人も一定数いるという。だが業界団体「不動産テック協会」の代表理事で、リマールエステート社長の赤木正幸さん(44)はこう話す。

「不動産テックはあくまでツールで、不動産業界を侵食するわけではありません。業界が新陳代謝し、成長していくための武器なのです」

(編集部・川口穣)

AERA 2020年2月24日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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