ショートの2分50秒は、永遠にも一瞬にも感じられるような、不思議な空気感だった (c)朝日新聞社
ショートの2分50秒は、永遠にも一瞬にも感じられるような、不思議な空気感だった (c)朝日新聞社
フリーはミスが出たが、それでも総合300点に迫るスコアは、次につながるはずだ (c)朝日新聞社
フリーはミスが出たが、それでも総合300点に迫るスコアは、次につながるはずだ (c)朝日新聞社

 2月に韓国・ソウルで行われたフィギュアスケートの四大陸選手権で、羽生結弦が優勝を果たした。今回使用した曲は「バラード第一番」と「SEIMEI」。2年前、韓国・平昌で五輪連覇した時の曲だ。AERA 2020年2月24日号では、曲変更の裏にある羽生の思いに迫った。

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 平昌五輪の名演と、目の前の優雅な舞がシンクロする。五輪王者・羽生結弦は、四大陸選手権、五輪と同じ韓国の地で、2年前と同じ「バラード第一番」と「SEIMEI」を演じた。

「今、自分がやりたいことを突き詰めるという感じが強くあります。ショートは自分自身が求めている心地よさを感じられました。フリーも点数は出し切れてないですが、方向性は間違ってないと感じました。スケートをやっていてよかったなと思えました」

 試合後、羽生はそう語った。

 突然のプログラム変更は2月1日。国際スケート連盟のホームページにこの2曲の名前があることが話題となった。4日にソウル入りした羽生は空港でのインタビューで語った。

「このプログラムたちと一緒にまた滑りたいなと心から思えた。とにかく自分自身が一番、自分が目指しているフィギュアスケートをできる、自分らしく滑れるプログラムだと思います」

 翌朝から始まった公式練習では、世界最高点を何度も更新した「バラード第一番」を完璧にこなした。練習後、羽生は改めて変更の理由を語った。

「まず、難易度を難しくすることはすごく楽しいですし、それを達成できたときの喜びは計り知れないものがあるんですけれど、自分が目指すスケートは、ただ難しいことをするスケートじゃないと思いました。高難度のジャンプを入れれば入れるほど、スケートの部分がおろそかになってしまう。それに耐えきれなかったというのが大きい」

 昨年12月、GPファイナルのフリーでは自身初の「4回転5本」を成功させたが、一方で、滑りの美しさへのこだわりはむしろ強くなった。

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