●遊び食べをして食べてくれない

 手で食べ物をグチャグチャして、全く口に入れない。口に入れないどころか、周りにポイポイ落としたり投げたりするもんだから、後片付けも大変! 手づかみ食べがスタートする離乳食後期(9~11カ月)以降によくあります。考えられる理由は2つ。

(1)食べ物の感触が楽しい
 自分で食べ物をつかめるようになり、きっと楽しんでいるのでしょう。食べ物に興味を持っている証拠です。ただ、やっぱり離乳食を口の中に入れてほしい!と思います。このような時の赤ちゃんへの対処方法は「赤ちゃん専用の器を用意する」。赤ちゃんがこの食事で食べる離乳食全量を赤ちゃんの目の前に置いていませんか? 最初から全量を目の前に置かずに、赤ちゃんの手づかみ専用の器を用意し、手づかみする1回分だけ器に入れます。赤ちゃんが食べたらまた手づかみする1回分だけ器に入れます。赤ちゃんが手づかみの感触を味わっていてなかなか食べなければ、横からスプーンで赤ちゃんに食べさせます。そうして手づかみ食べに慣れてきたら、徐々に器に入れる量を増やしていきましょう。

(2)お腹がすいていない
 遊び食べをする場合、そもそも、お腹がすいていないのかもしれません。「あ、これ食べないな」というのは、1分もしないうちにわかります。こんな時は、無理強いをしないこと。お腹がすいていなければ、離乳食を食べたくありません。思い切って「今は食べない」という選択をしてもOK。「30分後に食べよう」と赤ちゃんに伝えて、いったん離乳食を下げ、再チャレンジします。

●食べている途中で椅子から脱出する

 食べている途中で、椅子から脱出して遊ぶ子がいます。一口でもいいから食べてほしくても、追いかけて食べさせないようにします。「立ち歩いて食べてもOK」と赤ちゃんが認識してしまったり、立ち歩いて食べることでのどに詰める事故の原因になったりします。赤ちゃんが立ち歩いたら「座るよ」と椅子に座らせて一口食べさせる。また立ち歩いたら「座るよ」と椅子に座らせて一口食べさせる。気の長い話ですが、その繰り返しです。保育所では、このように対応しているので赤ちゃんたちは「ご飯は座って食べる」と分かっています。

 保護者さんから「どうして保育所では座って食べられるんですか?」と質問を受けることもあります。それは、親が追いかけて食べさせて「立ち歩いて食べてOK」にしてしまっているからなのです。赤ちゃんに座って食べるルールを分かってもらうまでは多少の根気が必要ですが、他のしつけをしたい時も、その根気が役立ちます。また、子ども自身も親の対応を見て「あ、これダメなヤツなんだ」とすぐにわかってくれるようになります。

 また、「もう食べないから終わりにしよう」と思った時は、赤ちゃんをいったん座らせ「ごちそうさまでした」と食事を終了させます。これらの一連の流れは、怒らず淡々と行ってください。

 食べることは生きることなので、赤ちゃんが食べないことは死活問題につながります。私の場合、長男が離乳食を食べてくれない子でした。離乳食がうまくいかないことで「母親として失格」のレッテルを貼られたように感じ、食べない息子の様子を見ようとせず、「食べさせる」ことだけ意識して離乳食を与えていたので、うまくいきませんでした。「あと一口食べて!」と思う気持ちは痛いほどわかりますが、食べられない理由が存在すること、その理由を赤ちゃんは説明できない年齢だということを親が意識するだけで、状況が少しずつ変化するのではないかと思います。赤ちゃんが「食べたい」と思う気持ちになることを信じて、気長に取り組んでみましょう。(文/中田馨)

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中田馨

中田馨

なかた・かおり/1978年生まれ。兵庫県の認可保育園、中田家庭保育所施設長。一般社団法人離乳食インストラクター協会代表理事。保育士目線の離乳食講座受講生は4年で2000人。自身も中3男子、小5女子の子育て中。

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