「だから、自分に対して書いていたところも多分にあったと思います」

 そのせいか、白石さんは連載中から何度も読み返した。発表後、自作を熟読するのは、初めての経験だった。

 小説は結論を明確に提示していない。その代わり、「自分だったらどうするか」「本当にそうだったのか」と物語の行間が気になり、余韻が長く心に残る。

「昔から死をどう理解するかに興味がありました。小説を書き続け、少しずつ僕なりに全容が分かってきた気がします。文字として言語化しなければ、自覚できませんから。この小説は、その分かりかけたものをこれから先、小説として書いていくと、自分に伝えるために生まれたとも思っているんです」

(ライター・角田奈穂子)

■八重洲ブックセンターの川原敏治さんのオススメの一冊

『百戦錬磨 セルリアンブルーのプロ経営者』は、新日本プロレスを飛躍させた男の経営論。八重洲ブックセンターの川原敏治さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

*  *  *

 V字回復後の新日本プロレスをさらに飛躍させた社長兼CEOの経営論。生い立ちから始まり、経営者に必要な心構えや行動指針を、さまざまな会社を渡り歩いた経験から、豊富な事例とともに幅広く紹介していく。なかでも新日本プロレスについて書かれた第4章では、経営側から見たスポーツビジネスのあり方を、マーケティング、契約面、海外展開などの視点から紹介しており、他のプロスポーツも同じように盛り上がれないものかと期待してしまう。

 また、日本の人材・組織の長所短所、外資との違いなどについて随所に触れられていて、日本人論、日本的経営論としても読むことができる。スポーツビジネスに限らず、組織とは何か、働くとはどういうことなのかなどの会社経営の基本知識も学べる。これから社会に出ていく人にもおススメの一冊だ。

AERA 2020年2月17日号