写真はイメージ(写真/Gettyimages)
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 70代まで働くのが当たり前の時代。がむしゃらに働き続けるのは、もう無理だ。納得のいく仕事を息長く続けるには、どうしたらよいのか──。自らの意思で働き方を大きく変えた3人を取材した。

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■同業他社へ転職 40代男性の場合

 不吉な予感が頭をよぎった。

 昼近くなっても直属の上司が会社に現れず、連絡もしてこなかったからだ。

 仕事一筋のまじめなタイプ。単身赴任。前日に頭痛を訴え、早退していた。

 関西の施設管理会社に勤める男性は、法人契約を結んでいるアパートの管理会社に連絡し、上司の自宅に駆けつけた。

 上司は布団の中でかっと目を開いたまま、かたまっていた。枕元に、睡眠時無呼吸症候群の補助キットが外れた状態で転がっていた。

 男性は第一発見者として警察に状況を説明し、上司の家族を呼び、火葬の手配もした。あわただしく実務をこなしながら、冷静にこう考えていた。

「この会社で働き続けるのは難しいな」

 上司は2週間、無休で勤務していた。男性も40代を過ぎて心身ともに不調を感じることが多くなった。転職は常に念頭にあったが、日々の業務をこなすのに一杯一杯だった。しかしもう限界だ―─。

 上司の死から2年後。男性は東京都内の同業他社に転職した。

 18年間勤務した前の会社からは若干の減収を余儀なくされた。それでも、40歳を過ぎてからの転職は自分のキャリアや可能性を知るいい機会になった、と感じている。無茶な残業もなくなった今は、ビジネスパーソン向けの勉強会やワークショップに顔をだす余裕もできた。男性は言う。

「人生を見通したとき、長く働くために環境を変えてリセットするのは大事なことだと思います」

■他部署へ異動 50代男性の場合

 同じ会社で働き続けても「ペース」を変えることはできる。

 中部地方のメーカーに勤務する50代の男性が、働き方を変えようと思ったのは8年前。引き金になったのは、他部署から異動してきた上司のパワハラだ。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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