絵が完成してもう1杯。絵は自宅に飾ったりプレゼントしたり。右端がインストラクターの寺田ナオミさん。参加費は税込み5500円だ(撮影/小暮誠)
絵が完成してもう1杯。絵は自宅に飾ったりプレゼントしたり。右端がインストラクターの寺田ナオミさん。参加費は税込み5500円だ(撮影/小暮誠)
杯を重ねる人も多い。ナオミさんは初デートにすすめる。「映画をみるより、並んで絵を描いたほうが相手のことがわかります」(撮影/小暮誠)
杯を重ねる人も多い。ナオミさんは初デートにすすめる。「映画をみるより、並んで絵を描いたほうが相手のことがわかります」(撮影/小暮誠)

 ワインを飲みながらリラックスして絵を描く。アメリカでPaint&Sipと呼ばれる、絵画教室とワインを組み合わせたセッションが東京でも開かれている。久々に絵筆をとって見えてきたこととは。

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 土曜の夜7時、東京・代官山の「ARTBAR TOKYO」でセッションが始まった。

「さあ、エプロンをつけてアーティストモードに入りましょう。大事なのはリラックスして楽しむこと。ここは真面目なアートスクールじゃないんです」

 とインストラクターの寺田ナオミさんが宣言する。集まったのは20代、30代を中心に男女17人。カンバスや絵の具はすべて用意されているから手ぶらでいい。しかもワインとソフトドリンクが飲み放題。飲みながら描く絵画教室なのだ。

 カリフォルニア出身のナオミさんは英語を交えてみんなのテンションを上げていく。

「きょうはオーロラの景色を描きます。ステップ・バイ・ステップで一緒にやっていくけど、全然違う絵を描いてもいいんです。クリエーティブにやってみましょう。では、カンパーイ!」

 ナオミさんの絵をお手本に、まずは太い筆でカンバス全面に青いアクリル絵の具を塗る。

「カンバスに描くの初めて」
「描けそうな気がしてきた」
「塗るの気持ちいいー」

 いきなりみんな楽しそうだ。絵心がまったくない筆者は不安でいっぱいだったが、ワインがハードルを下げてくれるのか気分が高揚してきた。隣の大学院生の女性は左手にワイングラス、右手に絵筆のスタイルだ。

 ナオミさんが問いかける。

「オーロラを見たことある人?」

「はい、カナダでオーロラツアーのガイドをやってました」

 一人の女性の答えに驚きの声が上がる。2杯、3杯と飲むうちに場が和み、初対面の人同士の会話が始まった。筆の動きも大胆になっていく。緑色とピンク色でオーロラを描き、ブラシで白い絵の具を飛ばして星にする。最後に前景の木々を描く。

 ナオミさんは細い線を描く方法や遠近感を出す技を教えてくれる。「木に積もった雪と地面の雪をつなげるといい」と言われてやってみると、見事に一体感のある風景が現れた。

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