「最近は現場の刑務官や医療部から、『この人は出所したら困るんじゃないか。福祉支援対象になるのでは?』と言ってくれるケースも出てきました」

 横浜力行舎の柴崎さんも、刑務所の変化に驚く一人だ。一昔前の刑務所は「出所するまでが仕事」という姿勢だったが、いまは出所時に当面数日分の薬を持たせてくれたりするという。

「これはありがたいんです。その間に私たちは病院で調整をして、彼らの服薬を切らさないようにできますから」

 再犯者の人数も、理由は特定できないが、この10年、減り続けている。

 一方で、10年で変わらないこともある。私たち、受け入れる側の意識だ。受け入れ先候補の施設から、「刑務所から出てきた人なんて怖くて、うちには入れたくない」と言われる。そんな現状について、府中刑務所の首席矯正処遇官、佐藤健司さん(53)は、こう訴える。

「『犯罪をしないで生きることへのチャレンジ』も失敗を繰り返すんです。人は変われるけどゆっくりとしか変われません。その過程を社会にいる方が、一緒に見つめていただけるようになることが、再犯防止につながる。関心を持って、知って、理解して、考える。そのプロセスが大事だと思います」

 前出の山下さんも言う。

「いろんな刑務所でお祭り的なことをやりますよね。『文化祭』とか、『見学ツアー』として。すごくたくさんの人が集まって、受刑者が作った品物を買っていったり、施設の中を見たり。良い傾向だと思っています。そういったことにぜひ足を運んで、関心を持つきっかけにしてくれたらうれしいですね」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2020年2月10日号

著者プロフィールを見る
小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

小長光哲郎の記事一覧はこちら