「最初はうまくいかなかったんですけど、そこから仕切り直してやっていくうちに、徐々に発芽率も増して育つようになり、昨年4月にようやくこの畑に苗を移し替えることができました。植樹するときが大変で、スコップで穴をあけてそこにポットから苗木を植えていく。これが時間と労力をとても使う」

 植樹という骨の折れる作業は、地域の人たちや農家の協力を得ながら一緒に行っている。普段、高原さんら沖縄SVの選手たちは、水やりや雑草取り、葉っぱのチェックなどを担う。

 昨年4月に移植した240本のコーヒーの苗木は、腰の高さくらいまで順調に育った。そのまま生育した場合、22年に収穫されるコーヒー豆の量は約200キロ、約1万杯分となる予定だ。ただ、現在良好に育っているコーヒーも、沖縄では避けて通れない試練がある。塩害、そして最大の天敵は台風だ。

 昨年も、幾度となく沖縄本島付近を通過し暴風が吹き荒れた。名護の小高い山にある沖縄SVコーヒーファームは海の近くであり見晴らしもよく、風を遮るものが少ない。だからこそ、暴風雨が直撃する。

「おそらくここは育てるのに一番厳しい環境。昨年は台風の影響もあり、防風林は結構倒れましたが、コーヒーの苗木自体は無事でした」(高原さん)

 防風林を植えたり防風ネットを張ったり、台風対策もしっかり行っている。手間暇をかけることが、夢を実現するには大事。サッカーで地道な練習を積んでこそ、試合のピッチ上で活躍できるのと似ている。

 20年度には琉球大学で育成中の1万本ものコーヒー苗木の移植を予定している。これらが順調に生育した場合の収穫量は7千キロ、約40万杯分に。コナコーヒーも夢じゃない。

「今後農園がさらに広がっていくと、自分たちだけでは手が回っていかなくなると思うので、地域の人も巻き込んで一緒に取り組んでいけたらいいなと思います」(同)

 コーヒー栽培は、苗の植樹後、実を収穫できるようになるまでに少なくとも3年はかかる。地域との連携を深めながら、長期的な計画が必要だ。

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