東京都北区の国立スポーツ科学センターでは、選手が競技力をアップさせ、東京オリ・パラの舞台で活躍できるよう、科学の力を生かしたサポートが行われている。小中学生向けのニュース月刊誌「ジュニアエラ」2月号では、「東京オリ・パラ 科学で進化!」を特集。そのなかに掲載された記事を紹介する。

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 スポーツは、ただ長い時間練習するだけでは強くなれない。大切なのは、科学的に練習することだと、国立スポーツ科学センター長の久木留毅さんは言う。

 ただ、「勝ちたい」と思うだけでなく、「なぜ勝てないのか」「なぜ記録が伸びないのか」を分析して課題を知る。そしてどうすれば克服できるかを正しく考えて練習すれば、短期間で効果的に力を伸ばせるという。

 国立スポーツ科学センターでは、日本のトップレベルの選手たちが科学的に練習して、世界で戦えるようになるための研究をしているんだ。

 科学的な練習のためのポイントは、計測による「見える化」だ。競技中の様子などをさまざまな面から観察・計測し、どんな課題がどの程度あるのかを、数字や映像などではっきりと示す必要がある。

 自転車競技やスピードスケートで競技力を左右する空気抵抗を計測し、「見える化」するのが風洞実験だ。人工の風で、実際の競技と同じ状況をつくり、選手への空気抵抗をリアルタイムで計測する。これなら自分の課題も、練習してどれぐらい改善されたかも一目でわかる。だから、練習にも納得して取り組め、効果的に成果を上げられるんだよ。

 2018年の平昌冬季五輪で、スピードスケートの女子団体追い抜きの金メダル獲得に貢献したのも風洞実験だ。この競技では、最も空気抵抗を受ける先頭を3人が交代で務める。後ろにいるときは、次の先頭のときに備え、体力を温存することが大切だ。そのために最適な姿勢や並び方を、風洞実験で探り出したのだ。東京オリ・パラの自転車競技も、空気抵抗が競技を左右するから、同じような成果が期待される。

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AERA編集部
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