「保存版とすべく、雑誌では実現できなかった企画も含めて、新しいコンテンツを盛り込みました。雑誌で好評だった『韓国文学一夜漬けキーワード集』は大幅に増補しています」

 女性作家の活躍がめざましい韓国だが、新しいタイプの男性作家やクィア文学、SFなど、これから紹介される大事な作品も多い。

「今後はより多様な作品が日本でも紹介されるので、韓国映画を観る時のように、好みの作品を選べるでしょう。また、韓国では移民の受け入れや格差社会の問題が日本よりも早く顕在化し、文学にも影響を与えています。韓国小説を『日本の未来』として読むこともできると思います」

(ライター・矢内裕子)

■ブックファースト新宿店、渋谷孝さんのオススメの一冊

『こころのナース夜野さん1』は、精神科のナースが、患者たちの心の痛みに向き合う物語。ブックファースト新宿店、渋谷孝さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

*  *  *

 心の病気にかかった人のためにある「精神科病院」。そこで働くことになった看護師の夜野さんは働き始めたばかりで、「心の病気」が何なのかよくわかりません。日々接する患者さんたちは、さまざまです。

 看護師さんたちには見えない虫が見えるひと。自殺をしたけど間違ったと思ったひと。リストカットを毎日するひと。「死ね」という声が脳内から聞こえてくるひと。そうした患者さんに対して、夜野さんは一人一人の話を聞くことから始めていきます。

 見えない虫が見える人の虫を退治したり、リストカットは死ぬためではなく必要なものだと確認したり、時には言葉を出さずに沈黙で相手を思いやったり。

 患者さんたちが抱えるそれぞれの心の痛みに向き合う精神科ナース・夜野さんの姿が胸に沁み入る物語です。

AERA 2020年2月3日号