高座が終わった後、かい枝さんの元に集まった外国人の一人は、こう話していたという。

「落語を日本のテレビで見たことはあるけど、言葉遣いが違いすぎて、何を言っているのか、どんな内容なのか分からなかった。こんなに楽しいものだったんだと驚いた」

 かい枝さんは5年前に日本語を母語としない人たちにも理解しやすい「やさしい日本語」の存在を知り、「英語圏以外の人にも落語を楽しんでもらえたら」と、大学教授、映像作家と普及委員会を立ち上げ、「やさしい日本語落語」を開始。全国約20カ所で上演してきた。

「ギャグは国によって違いますが、ドジやケチの話は万国共通。今年は東京五輪、2025年には大阪・関西万博もありますし、日本人と外国人が一緒に笑える空間を作りたい」(かい枝さん)

(ライター・井上有紀子)

AERA 2020年2月3日号より抜粋