3月には、上空から続けた観測の結果、リュウグウの地表の岩石に水が含まれていることがわかった。地球表面の水は、地球ができて数億年たったころに、リュウグウのような小惑星が大量に衝突してもたらされた可能性があると考えられている。今回の発見と、はやぶさ2が持ち帰るサンプルの分析によって、地球の水の起源について何か新しいことがわかるかもしれない。

 4月、はやぶさ2から分離させた衝突装置からリュウグウに金属の塊を撃ち込んで、直径約10メートル(推定)の人工クレーターをつくった。7月、人工クレーターの近くに2回目のタッチダウンを行い、クレーターができたときに地表に現れた地下の物質の採取に挑戦。人類初の試みで、成功はほぼ確実視されている。

 はやぶさ2の活躍について、宇宙航空開発機構(JAXA)の津田雄一プロジェクトマネージャは11月の記者説明会で、はやぶさ2がリュウグウとその近くで「達成すべき成果目標をすべてクリアした」と報告。

 はやぶさ2の最後の任務は、採取した砂や石を地球に持ち帰ること。19年11月13日にリュウグウを出発したはやぶさ2の地球帰還予定は、約1年後の20年末。はやぶさ2は地球の大気圏には突入せず、地球の近くを通過するときにカプセルだけを放出し、オーストラリアの砂漠に落とす予定だ。本体は残った燃料で引き続き別の天体へ、新たな探査に向かうそうだ。指定した地域にピンポイントで落下させるには、正確な方向やタイミングがカギになり、今後も気が抜けないという。

 小惑星は「太陽系の化石」といわれる。太陽系が生まれた46億年前に近い状態を保ち、当時の水や有機物(炭素を含む物質。生物の体をつくる材料になる)が今も残されていると考えられている。カプセルに入った砂や石の分析から、地球にある水はどこから来たのか、生命を形づくる有機物はどこでできたのかといった謎を解く手がかりが得られる可能性がある。「玉手箱」の地球到着が待ち遠しいね。(サイエンスライター・上浪春海)

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上浪春海
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