国際環境NGOの350.orgでも、地球温暖化を促進するビジネスを支援し続ける銀行から投資や預金を引き揚げる「ダイベストメント」のキャンペーンを実施している。19年3月から1月中旬までに1124人のダイベストメント宣言があったという。同時に、環境対策に積極的に取り組む銀行を「地球にやさしい銀行」としてホームページなどで発表。17年12月に発表したランキングでは、ソニー銀行、城南信用金庫、楽天銀行などの名前があがった。同日本支部代表の横山隆美さん(67)は言う。

「私たち市民が環境に配慮したクールバンクに資金を移すことで、銀行の意識を変えたいのです。ダイベストメントすることが企業へのプレッシャーになると考えています」

 横山さんはもともと損害保険会社の社長だった。以前はシーズンごとにスーツを買っていたが、今では「それなりにきちっと見えればいい」と買い物の回数が極端に減ったという。購入する際には、環境への哲学に共感できるパタゴニアのような企業やオーガニックのものを選ぶ。

 CSR専門誌「オルタナ」の森摂編集長は、こうした消費者の選択が企業を動かすと言う。

「私たちが買い続ける間は企業も提供を続けます。だからこそ、使い捨てはカッコ悪い、環境に配慮しない企業はよくない、という風潮になれば、企業はそれに合わせざるを得なくなります」

京都市に拠点を置く「消費から持続可能な社会をつくる市民ネットワーク」では、環境や福祉、人権に企業がどう向き合っているのかを評価する「企業のエシカル通信簿」を発行している。これまでに家電、外食、コンビニ、化粧品といった7業界の通信簿をつけてきた。共同代表幹事の※すぎ本(※は木ヘンに久)育生さん(66)は言う。

「車に乗るとしたら、どの車種が環境に良いかを比較するのはもちろん、販売や製造する企業が社会的にどういう立ち位置にあるのか考えることも大切です」

 とはいえ、消費者が自力で調べ尽くすのは難しい。同ネットワークでは、商品を比較するためのウェブサイト「ぐりちょ」を運営し、ポテトチップス、食パン、スニーカーなど、15のカテゴリーごとに、環境や人権に配慮した商品を紹介している。

「こうしたサイトを活用して商品を知ることで、環境負荷の少ない商品の選び方がわかるようになってきます」(すぎ本さん)

(編集部・福井しほ)

AERA 2020年2月3日号より抜粋

著者プロフィールを見る
福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

福井しほの記事一覧はこちら