羽藤:「新しい学び」と言いながら、学力を階層的な3要素に分けて捉えるなど、どこまで慎重に検討されたのか疑問です。
紅野:これから大学入試のあり方を検討するのであれば、その原点に立ち返った議論をぜひしてほしいです。
羽藤:今回の入試の混乱で、私が気になったのはむしろ大学や国立大学協会の側の主体性のなさです。
南風原:文科省に運営費交付金を握られ、顔色をうかがってばかりいました。その文科省の職員も主体性を持てなかった。
紅野:主体性を持てない大人たちが、生徒たちに求め、測ろうとしているのは自己矛盾の極みではないでしょうか。
羽藤:そのなかで唯一の救いともいえるのは、主体性を持った高校生や大学生たちがこの入試改革に異議を唱え行動する姿でした。受験生をこれ以上、振り回してはいけません。
●鼎談参加者
南風原朝和(はえばら・ともかず):東京大学名誉教授。広尾学園中学校・高等学校長。日本テスト学会副理事長。専門は心理統計学、テスト理論。東京大学理事・副学長、高大接続研究開発センター長などを務めた
羽藤由美(はとう・ゆみ):京都工芸繊維大学教授。専門は応用言語学。コンピューター方式のスピーキングテストを開発し、同大の英語プログラムやAO入試で実施している
紅野謙介(こうの・けんすけ):日本大学文理学部教授、学部長。専門は日本近代文学。筑摩書房高等学校用国語教科書編集委員。著書に『国語教育 混迷する改革』(ちくま新書)など
(構成/編集部・石田かおる)
※AERA 2020年2月3日号より抜粋・加筆