──以前から、共通テストの課題は「英語民間試験」と「記述式問題」だけではない。マークシート部分にもあると問題提起されてきました。

紅野:国語では、複数の資料を読んで答える問題が共通テストの目玉のひとつですが、求められるのは「読解力」ではなく「情報処理力」。また実用文の問題では、法律や契約の範囲内でどう対処するかばかりが問われ、それ自体の根拠や正しさを問うことになっていません。

南風原:「太郎さん・花子さん問題」と呼ばれる、むだに長い会話形式の出題も多いですが、そのような場面設定をすることで思考力がもっと測れるようになるというのは短絡的な発想で、根拠がありません。

──数学の関係者からは、数学の実力があっても、冗長な会話文につまずき、本来の力を発揮できない生徒が出ることに懸念の声も上がっています。どう収拾していけばいいでしょうか。

南風原:プレテストの実施の度に批判の声が上がるのは、マークシート部分の方針変更も専門的な検討を経ていないからです。プレテストの結果を詳細に分析して、センター試験より改善しているのか、劣化しているのか、エビデンスに基づく検証と反映が必要です。

●鼎談参加者

南風原朝和(はえばら・ともかず):東京大学名誉教授。広尾学園中学校・高等学校長。日本テスト学会副理事長。専門は心理統計学、テスト理論。東京大学理事・副学長、高大接続研究開発センター長などを務めた

羽藤由美(はとう・ゆみ):京都工芸繊維大学教授。専門は応用言語学。コンピューター方式のスピーキングテストを開発し、同大の英語プログラムやAO入試で実施している

紅野謙介(こうの・けんすけ):日本大学文理学部教授、学部長。専門は日本近代文学。筑摩書房高等学校用国語教科書編集委員。著書に『国語教育 混迷する改革』(ちくま新書)など

(構成/編集部・石田かおる)

AERA 2020年2月3日号より抜粋