すでに大阪では、米・MGMリゾーツ・インターナショナルがオリックスとパートナーシップを結んだ。横浜市にコンセプト提案をしたラスベガス・サンズは、「横浜のIRに1兆円規模の投資を予定し、複数の日本企業と話をしている」と言う。

 巨額の資金が絡むIR参入レースに多数の企業が食指を動かす。さらなる汚職の心配はないのか。ウィン・リゾーツ(米国)の開発を手掛けるウィン・デベロップメントは、「わが社ではコンプライアンスを最重視し、非常に厳格な規制、法律を順守するだけではなく、最も高い水準のビジネス倫理基準をクリアしている」(クリス・ゴードン社長)とコメント。厳格なルール順守をアピールする。

 米国には国外の公務員への贈賄を禁じる法律があり、違反すればカジノライセンスの剥奪もあり得る。だが、それでも不正はゼロにならない。ラスベガス・サンズは13年、中国とマカオで雇ったコンサルタントに68億円以上(6200万ドル)を不正に払ったとして米国証券取引委員会から告発され、10億円近い罰金を支払った。

 とくにアジア諸国では米国と比べて法律が緩いとされ、中小事業者はコンプライアンス面での縛りも弱くなりがちだ。

「500ドットコムの事例はまさにそうでした。汚職を防ぐためにはルールを設けることが必要です。大阪では職員とカジノ系の事業者が一対一で会ってはいけない決まりがある。しかし、国側には明確な基準がない。それが今回の問題が起きた要因の一つでした」(国際カジノ研究所長の木曽崇さん)

 IR推進法の付帯決議には、「世界最高水準の厳格なカジノ営業規制を作ること」が明記されている。だが、カジノ管理委員会が発足したばかりでまだ規制のない日本は、悪質業者の付け入る隙があるのかもしれない。

 事業者の関心が高まる日本のIR開発だが、住民からは真逆の反応も起きている。

 横浜市の林文子市長はIR誘致について、少子化でこれから税収が減る中、「増収効果で市民の安全な暮らしを支えることができる」と意欲を示す。だが、地元紙の調査では6割以上の市民が誘致に反対。伊藤毅さん(68)はこう憤る。

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