「公立一貫型入試」として、12年前にいち早く取り入れたのが、東京・中野の宝仙学園中高共学部理数インターだ。導入の理由を富士晴英校長は「面白いと思ったから」と、こう話す。

「詰め込みの知識ではなく、その生徒が持っている読書歴、家庭環境、人間関係、習い事などから吸収した学習歴を見ることができるのが、魅力的でした」

 狙い通り個性豊かな生徒が集まり、初年度は一桁だった入学者が19年度は118人と、全入学者数の半分を占めるようになった。富士校長が言う。

「もちろん塾に3年間通って勉強することも無駄ではありません。4科を学ぶという練習は、貴重な体験です。ただ、そういう生徒だけを集めると学校が均一化してしまう。入学当初は4科の生徒と知識の差がありますが、入学後しばらくたつと全く差を感じなくなります」

 同校ではその後も「入試理数インター」「AAA(世界標準)入試」など、新タイプの入試を導入。20年度は新しく「読書プレゼン入試」を新設し、合計で10種類の入試まで幅を広げる。

「自分自身を発信できる生徒がほしいですね。中学受験を、塾で訓練を受けた子どもだけの、特別なものにしたくありません」(富士校長)

 同校に限らず適性検査型で入学した生徒は、「伸びしろがある」「元気がいい」「積極的」などと、概ね好意的に受け入れられている。公立一貫校へのリベンジとして私立に入学した生徒が多いだけに、意欲も高い。前出の北所長は言う。

「入学当初知識は不足していても、適性検査型で入学した生徒は『その場で自分の頭で考え、表現する力を持つ子どもが多い』と学校から評価されている。4科で入った生徒と交じり合うことで、お互いに良い影響を与えているという学校も多い」

AERA 2020年1月27日号より抜粋

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