悔いの無い選択をするには? 作文に取り組む子どもたち
悔いの無い選択をするには? 作文に取り組む子どもたち
作文は苦手。そう言いながらも真剣な表情で原稿用紙に向かう
作文は苦手。そう言いながらも真剣な表情で原稿用紙に向かう

 たくらみ中学年(小学3・4年生)クラスでは、「人生は選択の連続である」を合言葉に、議論を通じて、身近な「答えのない問い」について考え続けてきました。

【写真】真剣な表情で原稿用紙に向かう

「悔いのない選択をするためにどうすればよいか」をテーマにした作文に取り組むことが今回のプロジェクトの最終ミッションです。

「僕が一番苦手なやつや……」

 子どもたちにミッションを提示すると、小3のAくんはため息をつくように本音を漏らしました。

 彼に限らず、作文に対して苦手意識を持っている小学生は多いものです。そこで、いきなり文章を書き始めるのではなく、まずはワークシートを使って、自分の考えを整理していくことにしました。

 今回の作文で押さえておきたいポイントは以下の三つです。

(1)議論を通じて、感じたこと

(2)自分の判断基準の傾向

(3)自分の傾向を踏まえ、悔いのない選択をするためにどうすればよいか

 最初は戸惑う様子も見られましたが、まずは箇条書きでよいので書いてみようと促すと次第に鉛筆が動き始めました。

 私はしばらくの間、彼らの作業をじっと眺めていました。

「文さん、ちょっと見てもらっていいですか?」

 小3のMちゃんがいったん書き終えたワークシートを私のところに持ってきます。

 内容を読ませてもらうと、彼女は自分の判断基準が「親・先生」と「決まり」に偏りがちだと自己分析していました。

 叱られたくないからという理由で親や先生の顔色ばかりうかがってしまうこと。

 同じ理由から、決まりやルールに盲目的に従ってしまうこと。

 これまで実施してきたケーススタディーの結果にいろいろと思い当たるところがあるようです。

 しかし、今後悔いのない選択をしていくためには、さらに考えを深めていかなければなりません。

「今のままやと、どんな問題が起きそう?」

「(親や先生の顔色を気にして)自分のやりたいことができなさそう」

「それだけ?」

「あと、その決まりが本当に必要かどうかわからなくなっちゃうかも」

「なるほど。で、Mちゃんはこれからどうしていきたいの?」

「やっぱり、本当にやりたいことを自分の頭で考えるようにしたい」

「じゃあ、そのためにどうすればいいかを考えてみたらどう?」

「……もうちょっと考えてみる」

 子どもたちが学びを自分ごととして捉えられるよう、一人ひとりとこのようなやりとりを繰り返していきます。

 そして、ワークシートが完成した子から順次作文に取り掛かります。

 そんな中、作文嫌いのAくんがワークシートにかなり苦戦している様子がうかがえました。

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山田洋文

山田洋文

山田洋文(やまだ・ひろふみ)/1975年生まれ、京都府出身。教育家。神戸大学経済学部卒。独立系SIerのシステムエンジニアを経て、オルタナティブスクール教員に。2016年4月、京都市内でプロジェクト学習に特化した探究塾の探究堂(http://tanqdo.jp/)を開校。探究堂代表、認定NPO法人東京コミュニティスクール理事。

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