英国のEU離脱を巡る主な動き(AERA 2020年1月20日号より)
英国のEU離脱を巡る主な動き(AERA 2020年1月20日号より)
新年のメッセージを語る英国のボリス・ジョンソン首相。総選挙で圧勝し「民意の負託を受けた」とEU離脱に突き進むが、課題は山積だ(写真:ツイッターの動画から)
新年のメッセージを語る英国のボリス・ジョンソン首相。総選挙で圧勝し「民意の負託を受けた」とEU離脱に突き進むが、課題は山積だ(写真:ツイッターの動画から)

 EU離脱推進を掲げ総選挙に打って出たジョンソン首相が圧勝した英国。月末の離脱は確実だが、それで終わりではない。次の「山」は6月に訪れそうだ。AERA 2020年1月20日号で掲載された記事を紹介する。

【写真】新年のメッセージを語る英国のボリス・ジョンソン首相

*  *  *

 安定多数を獲得したジョンソン首相だが、1月31日が過ぎればすべてが終わりではない。課題は山積している。

 英国はEU離脱とともに、EU機関に英国の代表を送らなくなり、EUの意思決定には関われなくなる。ただ、急激な変化を避けるため12月末までは「移行期間」とすることが離脱協定案で定められており、社会は表面上、何も変わらない。

 英国は、この期間中にEUと自由貿易協定を締結したい考えだ。移行期間は最大2年延長できると離脱協定案には書かれているが、ジョンソン首相は審議中の国内法案に「延長は禁止する」という内容を盛り込んだ。米国との自由貿易協定の締結に向けた交渉も並行して進めることを示唆し、EU側にプレッシャーをかける考えだが、通常は何年もかかる貿易交渉がそんなに短期間でまとまるのか、専門家の間でも懐疑的な見方が強い。

 移行期間を延長せず、貿易協定もまとまらないとなれば、今年の年末に再び、EUとの取り決めが無い状態で英国がEUルールから切り離される「合意なき離脱」と近い状態になり、経済に深刻な影響が出かねない。

 英国とEU加盟国の間の貿易はいまは無関税だが、貿易協定ができなければ、世界貿易機関(WTO)のルールが適用される。たとえば英国にある自動車工場からEU向けの乗用車には10%の関税がかかるようになる。英国とEU加盟国との国境で税関検査が復活し、部品の調達に遅れが出ることも懸念される。各社は事業の大幅な見直しを迫られる可能性がある。

 移行期間の延期の是非を判断する期限になっている6月末が近づくにつれ、本当に退路を断つのか、英国の出方が問われそうだ。

 EU離脱後、英国はどんな形の国をめざすのかという根本的な問いにも向き合わねばならない。

次のページ