残留派の票が労働党と、離脱撤回を明言した自由民主党に割れた影響も大きかった。英国内ではいまも、EU離脱支持者と残留支持者は半々くらいだ。ブレグジット党が前回の総選挙で保守党が勝った選挙区に候補を立てない「一方的な選挙協力」に踏み切り、離脱支持者の票が保守党に集まったのに対し、労働党は改選前から40議席も減らして203議席と惨敗。選挙前は好調だった自民党も最後は2大政党にのまれ11議席に半減、スウィンソン党首まで落選した。

 労働党惨敗は、急進左派のコービン党首によるところも大きい。反米、反戦、反王室などの信条が見え隠れし、有権者には「非愛国的」「自分たちと通じるものがない」などと受け取られた。離脱の是非を打ち出さなかったことも「指導力不足」とされた。

 若者ら一部には熱狂的な人気があるが、党内の中道派とはあつれきがあった。選挙戦中の記者会見で、コービン氏の存在が支持離れの原因だと指摘されると、コービン氏は自らを英国名物の発酵食品「マーマイト」に例えて「マーマイトは体にいいが、好き嫌いが分かれる」。党内の分断を招く存在だと、自ら認めざるを得なかった。

 1935年以来の低水準で、コービン氏は辞意を表明した。党首選には複数が名乗りをあげ、党員らの投票で4月には新党首が選出される。立て直しは茨の道となりそうだ。(朝日新聞ヨーロッパ総局・下司佳代子)

AERA 2020年1月20日号より抜粋