星:とくに子育てでは、お子さんに対してはつい、「本当に大丈夫かな?」「なんとかならなくなってしまったらどうしよう」と思いがちですよね。

前野:確かに、うちの子が昔中学受験したときも、私は「どうなっても大丈夫。なんとかなる」と言い続けていましたけど、妻はピリピリしていましたね(笑)。

星:親御さんたちが言っている、「なんとかならないかもしれない」は、結果ありきのものなんですよね。例えば受験だったら、「合格しない」が「なんとかならない」。でも、前野先生がおっしゃっている「なんとかなる」は、幸せに生きることができるかどうかですよね。合格しなくても、幸せに生きていくことはできる。だから意味合いが全然違いますよね。

前野:そう。「合格しなければいけない」という意味での「なんとかしたい」という発想は絶対にやめたほうがいい。親がそう思ったら、その緊張感は子どもに必ず伝わりますし、不幸せ感を持つと学力も下がります。親は自分をだましてでも、「なんとかなる」と言い続けないと。

星:脳科学的にも脳をだますことがスタートです。最初から100%そう思えなくても、口だけでも「なんとかなる」と言い続けていると思考もだんだん変わってきて、そのうち定着します。

前野:「なんとかなる」と思えるかどうかは、その人自身の気質もありますが、後天的な環境も大きく影響します。例えばグループの中に心配性の人がいても、周りの人たちが「大丈夫! なんとかなるよ!」と言い続ければそういう気持ちになれる。

星:親が子どもに毎日浴びせる言葉って大事だと思います。

前野:最後の「ありのままに」因子ですが、これは「人と比べない」ということです。自分らしく生きる。ただ、どうしても子育てしていると周りの子の成長が気になったり、成績を比べたりしてしまいがちです。僕がすごく幸せだったのは、小学校1年生のときの先生が「この子は大器晩成だから」って言ってくれたことかな。実際、子どものころは何をするにも行動が遅かった。でも先生がそう言ってくれたおかげで、親もそれを信じていつもそう言ってくれたし、自分自身も何があっても「俺は大器晩成だから大丈夫」って。実際40歳ぐらいからだんだん伸びてきた感じです(笑)。

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