「アスリートの自覚がないと言われるかもしれませんが、やはり僕は楽しむ気持ちで試合に臨んだ方がいい。ステファンコーチは、やっと自分にスケートの楽しさを戻してくれた、かけがえのない存在です」

 全日本のショートでは、4回転フリップ、トーループともに成功させ、105.71点で、羽生と5.01点差の2位につける。フリーでは、3本の4回転ジャンプを成功。回転しすぎて着氷が流れないなど、ギリギリのジャンプもあったが、耐えた。

「『頑張らなきゃ』ではなく、『頑張ろう』という気持ちだったことが、着氷をこらえた要因。のびのびと演技できました」

 総合290.57点をマーク。最終滑走の羽生にミスがあり、優勝を勝ち取った。会見では、羽生から言葉を贈られた。

「やっと昌磨に負けることができました。でも全日本王者って大変だよ! 昌磨にはこれからも胸を張ってほしい。僕も含めて、一緒に背負っていけたらいいと思うので頑張ろうね」

 宇野はこう答える。

「ゆづ君のように強くあることはできないけど、自分にスケートを楽しませてあげたいというのが、僕のスケート。この気持ちでこれからも臨みたいです」

 2人は四大陸選手権と世界選手権にエントリー。次は世界と戦う。(ライター・野口美恵)

AERA 2020年1月13日号