正しい食事について、具体的な話を。森さんは、食事だけで代謝を高める原動力はたんぱく質にあると説明する。

「たんぱく質は、食べたあとの消化吸収に時間がかかるため、代謝を高める効果が糖質や脂質の3倍もあります。筋肉を作るのはたんぱく質ですし、糖質や脂質に比べて体脂肪になる割合も圧倒的に低く、ダイエットにとってはメリットばかり。無理な食事で体内の栄養が不足し、痩せても即リバウンドする悪循環に陥らないために、良質なたんぱく質は必ず取るべきです」

 森さんが勧めているのは、1食あたり手のひら1枚分の肉や魚(約100グラム)を食べること。1日でいうと、肉と魚を手のひら2枚分、卵1~2個、納豆や豆腐などを2~3品取ることで、ダイエッターにありがちなたんぱく質不足が解消され、代謝アップにつながる。

「たんぱく質の必要量は最低でも成人男性で1日60グラム、女性で50グラム。できれば自分の体重(キロ)に1.5をかけ、グラムに置き換えた分のたんぱく質を摂取したいところです。60キロの人なら、90グラムということになります」

 数年かけて増やした体重をむちゃな方法で戻したら、不調が出るのは当たり前。代謝を上げてリバウンドしない体を作るにはたんぱく質をたっぷり取るのが最善の方法だという。肉や魚、豆腐を食べていいならば、単なるカロリー制限ダイエットのようにひもじい思いをする必要もなさそうだ。

 ところで野菜は? やっぱりブロッコリー山盛りですか?

「野菜はたんぱく質、糖質、脂質という三大栄養素の核にはなりませんから、私は“とにかくたくさん食べましょう”という指導はしていません。ビタミンやミネラルは必要なのですが、ドレッシングたっぷりのサラダを食べるくらいなら、みそ汁にワカメを入れてほしい」

 サラダ油、大豆油、コーン油などに含まれる「オメガ6」は体内の酸化ストレスを高め、細胞の炎症を促進するので特に避けるようアドバイス。油はオリーブオイルなどの酸化しにくいものを推奨するが、良質の脂質は肉や魚からも取れるので、無理に油を取る必要はない。(ライター・向井翔太、ジャーナリスト・安住拓哉)

AERA 2020年1月13日号より抜粋

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安住拓哉

安住拓哉

出版社勤務を経て2021年に独立。経済関連記事全般が得意。取材・執筆歴20年以上。雑誌の取材記事の他、単行本のライティングも数多く手掛ける。

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