──いまの社会のSNSでのコミュニケーションのあり方に、違和感をおぼえると?

 僕は、自分が「美しい」と思ったものをみんなに見てもらうとき、それはイエスかノーで決めるものではないと思うんです。でも、いまは票集めみたいな感じでそれがコミュニケーションの手段にされている傾向がある。本当にいい、美しいと思って、みんなにプレゼンしているのではなく、みんなの反応を読んだうえで表現したり、紹介されたりしている。それって、どうなのかなと思います。

──風間のような厳しい指導者に出会った体験は?

 舞台「盲導犬」(89年)で自分に向き合ってくださった蜷川(幸雄)さんがそうでした。そこに出演されていた先輩の役者さんたちもそうでした。「木村君、まず声の出し方からやろうか」と一から教えてくださった。蜷川さんに「ばかやろう!」って怒鳴られても意味がわからず、自分なりに解釈したりして。蜷川さんの舞台をやらせてもらって、見てくださった方から拍手をいただくことの意味を感じるという経験ができた。それがなかったら、いまの自分はないと思います。

 その後もいろんな現場に行かせていただき、毎回クラスと教官が変わり、学ばせていただいた。コミュニケーションがあまりないときもあれば、こんなにべたべた親しくなっていいのと思うときもあれば、「あの教官、シカトしてやろうぜ」なんていうときもあったり(笑)。

(朝日新聞記者・林るみ)

AERA 2019年12月30日-2020年1月6日合併号より抜粋