【ケース1】
 2歳を過ぎても発語がなく、「あー」しか言わないと相談にきたMちゃん親子。Mちゃんは体を使って遊ぶのが好きで、抱き上げてくるくる回ってあげると、大喜びで何度もやってほしがりました。そこで、抱き上げる前に「くるくる、する?」と聞き、「くるくる」と言いながら回ってあげるようにすると、その日のうちに「くるくる」という声かけにあわせて「うーうー」と真似をし始めました。

【ケース2】
 ダウン症のTくんは、いくつか単語を言うことはできましたが、語彙が少なく、言いたいことをうまく伝えられずにかんしゃくを起こすことが多いお子さんでした。そこで家庭でオノマトペを中心とした、わかりやすく短い言葉かけを心がけてもらったところ、いつもならかんしゃくを起こしそうな場面で、「ふわふわ」と、毛布が欲しいことを初めて伝えることができました。

 オノマトペと言うと聞き慣れないかもしれませんが、実は意識をしていないだけで、小さな子どものいる家庭では使われています。「ブーブーが走っているね」「モグモグ食べようね」など日常の会話にはもちろんのこと、赤ちゃん向けの絵本にもオノマトペを使ったものが多くあります。

「オノマトペは身の回りにあふれていて、4000語以上あるとも言われています。そこまで気負う必要はないでしょう。また、動詞と組み合わせることで、動詞の意味理解も促されます。たとえば、光っている石を見つけたときに、『キラキラしているね』や『光っているね』のどちらかだけではなく、『キラキラ、光っているね』など『オノマトペ』と動詞を一緒に伝えると、動詞の意味も学びやすくなります。もし、お子さんの言葉の発達に不安があるようなら、ぜひオノマトペを取り入れて言葉の世界を広げ、親子のコミュニケーションを楽しんでほしいですね」

 これまで長年、石上先生はオノマトペを用いた語りかけ以外にも、手作りのオノマトペカードを使って、多くの子どもたちの言葉の定着を図ってきました。今回、より多くの親子に使ってほしいとの思いから、カードのデザインやイラストを一新。現在、クラウドファウンディングで申し込みを受け付けています。(取材・文/まちとこ)