災害時にもデジタル機器は頼りになる。スマホには自分の住む地域の警報や避難情報などが送られてくるため、適切な避難のタイミングを判断しやすい。自治体の発信する情報や避難所、支援物資の情報も探せる。

「利便性とともに、生きがいができるということも大きい」

 と牧さん。子や孫とのテレビ電話、好きなドラマや映画を楽しんだり、趣味の写真を投稿したり。牧さんが開く講座を受講した人の中には、現実世界を舞台に、画面に現れるポケモンを捕まえるゲーム「ポケモンGO」をしながら、散歩を楽しむのが日課という80代の夫婦もいる。

 孤独を解消し、便利で生きがいも得られる親のデジタル化は子ども世代にとっても、心配事を減らす助けになる。

 都内に住む40代のフリーランスの女性は、子どもが生まれた後、ビデオカメラ代わりにと母の誕生日に家族でタブレットをプレゼントした。以来、78歳の母は孫の写真を眺めたり、ネット検索をしたり、マージャンゲームを日々楽しんだりしている。一方で、母より10歳上の父は、職場に大々的にパソコンが導入される前の世代。興味は示すものの、何度説明しても使いこなせず、「置いてきぼり」に。

「父は本を読むのも字が小さくて疲れると言い、生活に刺激がない状態。このままだと認知症にならないか心配です」

 神戸市の57歳の会社員女性は87歳の父と同居しているが、

「耳が聞こえにくいので、せめてメールを覚えてほしかった」

 10年以上前に父母一緒にガラケーを契約。母は携帯メールをマスターしたが、父は通話のみで利用。3年前に母が亡くなり、2年前に父がアルツハイマー型認知症を発症した。突然家を出て歩き回ることもあるため、GPS機能のあるスマホや家の様子が仕事中にも確認できる見守り用デジタル機器が気になっている。

「仕事中、父を一人にする時間が不安で。自分の精神的安定のために、あればいいなと」

 首都圏在住の心理カウンセラーの樋口秀一さん(50)も、群馬県の実家に一人で暮らす母・礼子さん(78)に15年ほど前にガラケーをプレゼントし、以後使用料も負担している。母に「スマホどう?」と話を振ったこともあるが、ガラケーの電話帳登録さえもできない母は「難しそう」と断った。

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