日々多くの話題がSNSで盛り上がるが、やがて忘れ去られることも多い。一過性のものにせず、ムーブメントとして形作るところまで持っていくことができたのは、署名というフォーマットがあったからこそだ。

 加藤さんと遠藤さんについて、「2人の強みは当事者性があり、困っている人に寄り添うという視点があること」と武村さんは紹介する。加藤さんは国際基督教大学ジェンダー研究センター、企業を対象としたLGBT研修を行うNPOなどでゲイをカミングアウトして働いてきた経験をもち、遠藤さんはトランスジェンダーとしてLGBTの子ども・若者支援に長年携わり、自身もチェンジ上で教科書のLGBT表記に関する署名を集めたことがある。

 キャンペーンを立ち上げる発信者は、自分に降りかかった問題で疲弊していることも多い。自分をケアすることと社会に打って出ることの両立は簡単ではない。#KuToo運動にも過酷なバッシングが向けられたが、

「遠藤さんがいつも声をかけてくれたので、一人じゃないと思えたし、気持ちが保てた」

 と石川さんは振り返る。(編集部・高橋有紀)

AERA 2019年12月30日号-2020年1月6日合併号より抜粋