ところで、このプラットフォームに「中の人」がいることはご存じだろうか。

 立ち上がったキャンペーンの認知拡大について戦略を練り、イベントを仕掛け、メディアとの橋渡しや記者会見のセッティングをし、署名提出に同行する。こうしたサポートを実は「中の人」たちが行っているのだ。

 日本オフィスのメンバーは現在4人。日本での戦略全般をかじ取りするのが前出の武村さん、広報・マーケティング的な役割を担うのがパートナーシップ担当の西前歩さん。武村さんの前職はPR会社勤務で、西前さんも広告会社でのバックグラウンドを持つ。

 まだ話題になっていない問題をより多くの人に気づいてもらうため、どういう切り口で語ると共感してもらいやすいのか、どこに話を持ちかければ響くのか。マーケティングの視点で考え、必要があれば他団体との連携を図る。

 一方、キャンペーンの立ち上げから成功まで、発信者に寄り添う「キャンペーン・サポーター」を務めるのは加藤悠二さん、遠藤まめたさんの2人だ。

 例えば#KuTooでは、運動の呼びかけ人となった石川優実さんがツイッターで「やはり署名? だけどどこに出すのかだよなぁ」とつぶやいていたのを見て遠藤さんからコンタクトを取ったという。

「はじめは労働法のこととか、何がわからないのかもわからないという状態でした。省庁に何かを提出するなんていうことが、一般人にできるとも思っていなかった。遠藤さんが過去の事例などを教えてくれて、私の希望に沿って適切な方法を提案してくれました」(石川さん)

結果的に、立ち上げから3カ月を経て、集まった1万9千通近い署名を、厚生労働省雇用機会均等課に提出した。

「単なる署名プラットフォームではなく、イシュー・ビルディングまでできるのが私たちのサイトだと思っています」

 と武村さんはいう。イシュー・ビルディングとは、課題や論点を設定するということ。#KuTooはその象徴だ。

 キャンペーンが立ち上がることで、ヒールを女性だけに強制するのは差別的だと明確に言語化された。そこに多くの人が賛同の意思表示をすることでコミュニティーができ、社会的なムーブメントとして認識された。

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