1日の大半を職場で過ごすオフィスワーカーの場合、職場と自宅、両方での対策が必要だ。

 ポイントは「足元の暖かさ」だ。床上1メートルの室温が18度以上でも床上の温度が16度未満である場合、高血圧のリスクは室温18度未満の場合とほとんど変わらないという。

 オフィスの場合、エアコンは天井から温風が出るタイプが多いため、なかなか足元が温まらない。ひざ掛けをする、温かいスリッパをはく、コンパクトなパネルヒーターを足元に置くなどの自衛策が必要だ。

「足元の温度が2度低いだけで計算処理などの能率が下がったという研究もあり、仕事の効率にも関係します」(同)

 自宅で注意したいのが窓などから伝わり、冷たい気流となるコールドドラフト現象。家の断熱性が低いために起きるが対策も可能だ。暖かい気流を足元に送るためには暖房器具を窓下に置くのが有効。窓ガラスに断熱シート、窓のサッシに隙間テープを貼って外の冷気を防ぐのもよい。

 居間だけでなく、脱衣所や寝室などの温度にも気を配りたい。居間と寝室の室温を両方とも18度に保つ場合に比べて、居間が18度、寝室が10度と温度差が大きいと、起床時の血圧が高くなるという調査報告がある。渡辺尚彦医師も、温度変化は寒さ以上に血圧を上昇させると警告する。

「交感神経が刺激されて血圧が一気に上がり、脳や心臓疾患が起こりやすい」

 すべての部屋を暖めておくのが一番だが、難しい場合は寒い部屋に行くときには上着を羽織る、マフラーを巻く、帰宅しても部屋が暖まるまではコートを脱がないなど、対策が必要だ。(編集部・小長光哲郎)

AERA 2019年12月23日号

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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