アメリカの公園にある子ども向けのルール書き(写真/著者提供)
アメリカの公園にある子ども向けのルール書き(写真/著者提供)

 日本には細かいルール設定が多すぎるのではないか、という話を前回しました。例として公園の遊具に掲示されている「ひも付き手袋はダメ」「マフラーもダメ」といった風紀委員会のような服装規定を挙げたところ、「事故を未然に防ぐためには必要だと思いますよ」というご意見をいただきました。

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 確かに、事故は嫌です。子どもが事故に遭うことなど想像したくもありません。しかし、あれはダメ、これもダメと細かく定めるだけで、「ひも状のものを身に着けて遊ぶと、遊具に引っかかったり首が締まったりするかもしれないよ」のようなルールの背景を大人が説明してあげないと、子どもは「ひも付き手袋とマフラーさえしなければいいんだな」とただルールに従うだけで終わってしまうかもしれません。結果、たとえばネックレスやイヤホンコードを着けながら遊んでしまったら──。かえって事故の予防から遠ざかってしまわないでしょうか。細かいルールは丁寧でわかりやすい半面、大局的な視野を奪ってしまうことにもなりかねません。

 また、本当に想像したくはないのですが、事故はいつか起きるものです。どんなに注意を徹底しても、100パーセント防ぐことはできません。日本の文化は失敗を恐れる傾向にあり、ひとつのミスや事故も起こさないよう事前準備はしっかり行う一方で、ミスが起きたときの対処は事前準備ほど完全に行われない印象があります。ミスが日常茶飯事、代わりにミスのフォローは早いアメリカに暮らしているとつくづくそう感じます。どちらがいいかは好みかもしれませんが。

 アメリカと日本では、子育ての目的も真逆といっていいほど違います。東洋(あずま・ひろし)著『日本人のしつけと教育』(東京大学出版会)によると、「いい子の特性はなんだと思いますか」という問いに返ってくる答えが日米でまったく違うといいます。アメリカ人は「独立性・リーダーシップ」という回答が一番、二番目は「異なった意見への寛容性」なのに対し、日本人は「基本的生活習慣」がトップで、次が「規則を守る」だそう。「日本で期待されるのは、従順で、きまりに従い、行儀がよいなど(中略)いっしょにいるのに差し障りにならない性質であり、アメリカで期待されるのは、ひとりで人のなかに出ていくのを前提として、そこで自分をしっかり立てていける性質だということができよう」と結論付けられています。

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大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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