同社の山本裕輔さん(43)は健康経営に関する部署のリーダーということもあり、今年4月から生活習慣を改善。体重を5キロ落とした。社の取り組みゆえに、仲間には事欠かない。同僚や家族、保健師が「痩せてすごい!」と褒めてくれる。これがモチベーションアップにつながる。「パンはカロリーが高い」などの情報が入ってくるのも有難い。

「自分の問題点を明らかにし、褒めてくれる仲間がいるのがいいですね。これらがないと、挫折してしまう」(山本さん)

 業界をあげての取り組みもある。全日本トラック協会(東京都新宿区)は、各事業所に血圧計を普及させるために助成金を出し、点呼時の血圧測定を呼びかけている。

 背景には、ドライバーの疾患による事故への危機感がある。国土交通省によると、タクシーやトラックなど、プロドライバーが運転中、何らかの疾患により運転を継続できなかった事案は、2012~16年の5年間で1046件。そのうち16%が脳血管疾患、14%が心臓疾患だった。死亡に至った事例では、50%が心臓疾患、15%が脳血管疾患。いずれも高血圧が大きくかかわっている。

 同協会の大西政弘さんはこう話す。

「原因の一つには長時間労働の常態化がありますが、トラック事業者の99%が中小企業のため、産業医などはいない。そこで、協会として取り組みはじめたのです」

 健診を受けても生活改善をせず、放置してしまう人も多い。そこで「運輸ヘルスケアナビシステム」の運用を始めた。事業所から健診データを預かり、脳・心臓疾患のハイリスク者を検出、任意ではあるが管理者からドライバーへ検査を受けるように働きかけてもらう。

 17年に実証実験でこのシステムを活用したドライバーは約2千人。「死の四重奏」と言われる肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症に一つ以上該当している人は54人いたが、18年には30人に何らかの改善が見られたという。(ライター・羽根田真智)

AERA 2019年12月23日号