ショートでもフリーでも圧倒的な演技を見せたネイサン・チェン。羽生結弦との最高峰決戦の次なる舞台は来年3月の世界選手権だ (c)朝日新聞社
ショートでもフリーでも圧倒的な演技を見せたネイサン・チェン。羽生結弦との最高峰決戦の次なる舞台は来年3月の世界選手権だ (c)朝日新聞社

 今季のフィギュアスケートGPファイナルで激闘を演じたネイサン・チェンと羽生結弦。軍配はチェンに上がったが、会見ではチェンの羽生に対する強い尊敬が感じられる場面があった。AERA 2019年12月23日号では会見での二人の様子を取材した。

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 ネイサン・チェン(20)と羽生結弦(25)による頂上決戦は、双方が「ショートで2本、フリーで5本の4回転」という超人的なプログラムをぶつけ合う戦いとなった。パーフェクトに演じたチェンが、335.30点で、自身が持つ世界記録を更新し3連覇を達成。会見で強さの秘訣を聞かれたチェンは、迷うことなく答えた。

「結弦がいたからです。彼はいつも僕の前を進んでいて、僕がもっと努力し続けなくてはならないと思う進化を示してくれます。神様のような存在の結弦と試合することが、何より興奮するんです」

 米・ソルトレークシティ出身。2歳のころ地元で冬季五輪が開かれ、スケートと出合った。まだ4回転を跳べなかった14歳の時、ソチ五輪を見た。

「まだ男子が4回転1本の時代でした。でも結弦は4回転2種類を入れていたんです。なんてすごい選手がいるんだ、僕も大きくなったらこんなふうに常識を打ち破るような選手になりたい、と感銘を受けました」

 羽生を見習い、限界を設定せずに次々と4回転に着手していく。2015年に国際大会で初成功すると、17年四大陸選手権のフリーでは「4回転4種類5本」を成功させた。しかし羽生と対戦したことで、方向性の違いにも気づいた。

「結弦に憧れて4回転を何種類も跳べるようになったけれど、一緒に試合をしてわかったのは、結弦の演技構成点や加点のすごさでした。氷に降りただけで会場を包むオーラがあり、目が離せない。僕が何本4回転を降りても結弦とは比較にならないとわかったんです」

 チェンにはバレエと体操の基礎があり音楽センスはあるが、さらに演技力を磨こうと考えた。

「限界の本数まで4回転を入れる、というやり方は終わりにしました。いかにパーフェクトな演技をするかの重要性を結弦から学んだんです」

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