でも考えてみれば、日本には昔から物語の語り部がたくさんいて、そういう方たちは老若男女を自分一人で演じ分けています。そういうことからも、本を読む朗読というよりも役を語る語り部として務められればと、ある時から思ったのです。

『国宝』を通じてエンターテインメントとしての歌舞伎の魅力をお伝えできる作品を書いていただいたことに、一歌舞伎役者として頭がさがる思いです。細部にいたるまでリアリティーを持って描いてくださいました。これは歌舞伎に身を置いている人間だからこそ感じた部分です。作品のご執筆には大変ご苦労があったと思いますが、歌舞伎を題材にしてくださったこと、そうして生まれたこの作品に対して敬意を示します。ありがとうございました。

AERA 2019年12月23日号