──活弁のシーンは、声の出し方といい、圧巻でした。

成田:本当に何もわからないゼロの状態からのスタートだったので、徐々にやっていって、少しずつ身になっていった、という感じですね。今思うと、練習を始めたころの自分に「やる気あるの?」と言いたくなります(笑)。一生懸命やってはいたものの、声の出し方もリズムもわかりませんでしたね。

 現役で活動弁士として活躍されている坂本頼光先生から教えを受けたので、俊太郎にはどこか坂本先生の要素が入っていると思います。神田松之丞さんの講談を聞きに行くなど、とにかく日常的に伝統的な日本の語りを“聞く”ことも意識していました。実際に撮影に入ると、エキストラの皆さんのエネルギーをものすごく感じました。“無声映画の観客”に扮するエキストラの皆さんが一生懸命盛り上げてくださり、エネルギーをもらいました。

──永瀬正敏さん、竹中直人さん、小日向文世さん、竹野内豊さん、と経験豊富な共演者から学ぶことも多かったのでは。

成田:撮影しているときも、空き時間も、本当に、最高の時間でした。永瀬さんには役者になる前から一観客として憧れていたので、「永瀬さんが出演されていた『私立探偵 濱マイク』のDVDボックスを買って観直しました!」「ジム・ジャームッシュの作品には、どういう経緯で出演することになったんですか?」「普段どういう生活をされているんですか?」などと質問攻めにしていましたね。

──周防監督の代表作である「Shall we ダンス?」(1996年)が公開されたとき、成田さんは小学生にもなっていなかった。そう考えると不思議です。

成田:「Shall we ダンス?」が公開されたとき、僕は何歳だったんだ? 2歳だ、2歳! でも、まさに「Shall we ダンス?」はみんなが知っていて、多くの人が観ている作品ですよね。「カツベン!」もそんな存在になれたらと思います。「え? 『カツベン!』を観ていないの?」という会話が自然と生まれたらいいですね。

次のページ