「三十周年記念オリジナルアルバム『新青年』リリースワンマンツアー」ファイナルの東京都江東区の豊洲PITでのライブより(2019年7月26日)。鈴木研一(左、ベース)、和嶋慎治(右、ギター)※撮影/堀田芳香
「三十周年記念オリジナルアルバム『新青年』リリースワンマンツアー」ファイナルの東京都江東区の豊洲PITでのライブより(2019年7月26日)。鈴木研一(左、ベース)、和嶋慎治(右、ギター)※撮影/堀田芳香
人間椅子のファーストアルバム「人間失格」(1990年)に収録された代表曲「りんごの泪」ミュージックビデオより。鈴木研一(左、ベース)、上館徳芳(中、ドラムス=当時)、和嶋慎治(右、ギター)
人間椅子のファーストアルバム「人間失格」(1990年)に収録された代表曲「りんごの泪」ミュージックビデオより。鈴木研一(左、ベース)、上館徳芳(中、ドラムス=当時)、和嶋慎治(右、ギター)

 1980年代末、TBSの深夜枠で放送された「いかすバンド天国」。当時爆発的な人気を誇り、「たま」や「BEGIN」「FLYING KIDS」などの個性的なバンドが輩出した。その中でも特に異彩を放ったのが「人間椅子」だ。ねずみ男のような扮装の大男が繰り出すのたうつベースに、眼鏡をかけ少年の面差しも残した超絶技巧のギタリスト。重厚なサウンドに文学的な歌詞――。バブルに沸く東京の「バンドブーム」のただなかで人間の業を歌う「針の山」には、強烈なインパクトがあった。

【写真】29年前の「人間椅子」はこんなにも若かった!

 その後のバブル崩壊や音楽配信サービスの上陸など、音楽業界は激動の時代を迎えたが、人間椅子は変わらずおのれのハードロックを奏で続けた。2013年、ハードロックのフェス「オズフェスト」のももいろクローバーZのステージに和嶋慎治がギターで参加したことでアイドルファンなど若年層への周知が進み、ファンがYouTubeにアップロードしたロックの名曲のカバー動画などで海外ファンが人間椅子を発見。そして30周年。いまふたたび内外から熱い注目を集めている。メンバーの和嶋慎治(ギター・ボーカル)、鈴木研一(ベース・ボーカル)、ナカジマノブ(ドラム・ボーカル)に話を聞いた。

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――2019年5月14日に公開された「無情のスキャット」のミュージックビデオが11月、300万回再生を突破しました。

和嶋慎治:「やっと発見した」というコメントがあったりして、やってきたことは正しかったと思いました。エレキギター、エレキベースはアメリカの発明品ですが、それを使ってあえて日本語でハードロックをやるというコンセプトで続けて来ました。おそらくそれが海外のオーディエンスにも新鮮に響いたんだと思うんですよね。

ナカジマノブ:まったく想像していないことが起こっている感じがしていて。コメント欄で、「やべーすげーかっこいい」とか、「人生が変わった!」というくらいに書いてくれて嬉しいんですが、まだそこまで海外の方に認知されたという実感はないんです。もしこれで海外でライブをやって盛り上がったり、海外でもCDが売れたとなれば実感があると思うんですが。

――ついに2020年2月、ベルリンやロンドンを回る初の海外ワンマンツアーが決定しました。

鈴木研一:「無情のスキャット」はすごくイイ曲だけど、これ以外にもぜひ海外の人に聞いてほしいという曲がいっぱいあるので、それを演奏したい。たとえば「賽の河原」とか。お経のようなのたくったメロディーだったり、和嶋君の津軽三味線を取り入れたギターだったり、そういうものは聞かせたいですね。

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あうんの呼吸にびっくり