●なぜ米中貿易摩擦が起きた?

 先に争いを仕掛けたのはトランプ米大統領だ。2018年3月、中国などから輸入する鉄鋼製品に、関税を上乗せすると表明した。16年の大統領選挙で、鉄鋼業が衰退した地域の白人労働者の支持を得たため、「米国第一」の公約を実現した。中国はこれに対抗し、アメリカ産の大豆や牛肉などに関税をかけ、摩擦が激化していった。

●世界への影響は?

 世界1、2位の経済大国である米中の対立が、世界経済に悪影響を与えることは避けられない。お互いに関税をかけ合えば、輸出や輸入にブレーキがかかるためだ。アメリカ寄りの国々と、中国寄りの国々が生まれ、経済がブロック化することも心配されている。

●なぜ日韓が対立した?

 戦時中に日本統治下の朝鮮半島から日本の工場や炭鉱などに労働力として動員された人たち(徴用工)の訴訟で、韓国大法院(最高裁判所)が2018年、日韓基本条約と相いれない判決を出し、日韓両政府の関係が悪化した。日韓は輸出規制を強化するなど、お互い相手が信頼できないと主張している。

●日韓両国への影響は?

 日本は7月、半導体関連の3品目(フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素)の輸出規制を強化し、8月には輸出優遇国(ホワイト国)のリストから韓国を除外した。これにより、モノづくりの部品供給網(サプライチェーン)が乱れ、両国の製造業に悪影響を及ぼしつつある。また、日韓関係の悪化で、韓国からの訪日観光客が激減したほか、日本製品の不買運動が起こり、日系企業の売り上げが落ち込むなどの影響も出ている。(朝日新聞論説委員・小村田義之)

※月刊ジュニアエラ 2019年12月号より

ジュニアエラ 2019年 12月 増大号 [雑誌]

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小村田義之
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